イタリア様式
イタリアの額縁の大きな特徴は宗教的色彩が強いということである。祭壇縁の流れを継承し、教会などの壁面に飾るのにふさわしい、荘重な様式が確立されている。文様のなかには、ギリシャ文化を復活させたルネッサンスの名の通り、ギリシャ、ローマ以来の伝統的なものが多く使用されている。一方文様(彫り)の無いシンプルなスタイルもあり、これらの多くは広めのフリーズを持ち合わせた“カセッタフレーム”と言い内外と色分けされた物が多い。この様式は現代の額縁様式の基本となっている。
スペイン様式
イタリア・ルネッサンスの文化をフランスとはまた異なった角度から取り入れた国スペイン。この国の額縁の様式には独特の文様が彫り込まれている。フランスが流れるような美しさを追求したのに対し、スペインの様式は、ひとつひとつの模様が独立していて、かっちりした形を作り出している。構成も大胆で、その手工芸技術の卓越さと共に高く評価され他のヨーロッパ諸国でも取り入れられた。
オランダ様式
16世紀末、オランダはスペインから独立を果した。貿易、海運や毛織物業の発展はめざましく経済的繁栄と富裕、学問、文化、芸術の隆盛を実現して、ヨーロッパ随一の先進国になった。オランダは、イタリアの文化をスペイン経由で取り入れたため、額縁の様式もスペイン様式に近いものである。黒檀・紫檀・べっ甲などユニークな素材を使いこなしている。みごとな艶消し金の装飾工夫もある。
ドイツ様式(ロココ)
ロココはヨーロッパとアメリカ全体に広く普及し、さまざまな国で採用されたため、個々のスタイルが存在する。近代ドイツを構成する国々、中欧、スカンジナビアでは、誇張された非対称性や飛散するカルトゥーシュの使用が、その母国フランスよりもさらに顕著。ドイツのロココの特徴は四隅のエネルギーにありデコレーションは大きく独創的で模様配列もシンメトリーを破るアシンメトリーが登場した。
ビクトリアン様式(リバイバルフレーム)
19世紀のイギリスでは、ロココを中心にフレンチバロックから新古典などのリバイバル(複製)フレームが大量に製作された。ビクトリアン様式のフレームは規則や法則にとらわれない、例えばゴシックをリバイバルするのにもルネサンスやバロックの要素を融合し再解釈するような考えである。技法の多くはコンポジション(型取)で作られ、伝統的な技法にとらわれず自由で生産性を重視した技術革新を試みている。アーティストの視点から見ると、ラファエル前派(美術家や批評家の活動家集団)による象徴主義主張の影響により、イギリスを中心とした油彩画家が飛躍する過程で無くてはならない存在であった。
「欧州における額縁の歴史と代表的な様式」:終わり
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